<動体視力の急激な低下が止まらない!?>

6月20日に脚注に書いた『動体視力の急激な低下』は、どうやっても止まらなかった。茶室に残っていた陰の恐ろしく強い茶碗や茶器、釜や風炉、花入れなども処分した。その結果、膝は思いきり緩んだが、動体視力の急激な低下は、この原稿を書いているときも止まってはいない。しかし、『きっと何とかなる』という根拠のない信念とともに丸善の卓球場に向かった。卓球場に着くと梅澤さんは既に来ていて『待っていました。あの人と1セットやったら、すぐやりますから』と言った。

卓球場で練習している人は、今まで見たこともない人ばかりだった。中年の人など一人もいない。小学生や中学生のような人も一人もいなかった。卓球を練習している人は、体格が良く、卓球をするタイプではない。動体視力が高くて、ミスをするタイプなので、昔なら卓球はしないで野球やサッカーをするタイプだ。球速は速い。『篠塚大登 vs 森薗政崇』の動画のような試合運びで、篠塚大登のように、たまに、サービスミスをする。卓球に人気が出て来たので、運動能力が極めて高い子供を丸善の卓球教室に通わせた結果だ。丸善クラブトップの梅澤さんは、スーパー東大系だけあって、あらゆる卓球の技術に習熟している。子供の指導にはうってつけなのだ。上司の藤本さんのお嬢さんは小学生のとき日本代表になっている。

試合を見ると、梅澤さんはフォアに強打された球を肩よりも高いところでブロックして、返ってきた球を強打し返すような華麗な技を見せた。僕は、この時点になって、『これではどうにもならない』と気がついた。

試合の前に梅澤さんと打ち合ったが、ボールが台から飛び出してしまって入らない。梅澤さんもびっくりしたようで『卓球マシーンのボールのスピードが普通じゃない状態で長期間練習したんじゃないですか』と言った。

今考えると、動体視力が低下して、スイングスピードが極端に落ちていたのだ。このラバーを試打して選んだときには、インパクトの瞬間にラバーが伸びて固いスポンジの上を滑る感じだった。ボールは一直線に飛んだ。ところが梅澤さんと打ち合ったときには、ボールがラバーでポンとはじき返されてしまい、スポンジまで到達しない。コントロールも効かない。『こりゃあだめだ』と思った。試合は、第1セットがサービスエースで1点、第2、第3セットは3点だったが、梅澤さんの出血サービスだった可能性が高い。

試合が終わると、『東京都の予選はレベルが高くて、僕でも全く出る気にはなりません』と言った。『それは分かっています』と言うと、『卓球を人間とやってないでしょう』と言う。『全くやっていません』と答えると、『それじゃあダメです。卓球は人間とやらないと強くなれません』と言われてしまった。返す言葉もないので『おかげで正気づきました』と言ったら、梅澤さんは安心したらしく『ああ、よかった』と言った。梅澤さんはいいやつなんだと実感した瞬間だった。

毎年7月と8月は、梅澤さんが忙しくて試合はできなかった。念のために、『来月試合はできますか』と聞くと、僕の状態が気になったためか、9日の土曜日に試合をすることになった。

今回の不思議な現象は肝機能が上がることで起こっていた。そして、この現象は心臓防御反応以外にはありえなかった。三里が緩み、足が緩んで肝経に気が流れるようになると、筋肉や皮膚、内臓や脳も緩む。ところが左腕を流れている心経が緩まないために、心臓の機能が相対的に低下した状態になる。肝機能が上がって他の臓器の機能が上がると、左手の心経が緩まないために、心臓の機能が相対的に、どんどん低下していくのだ。そのため、肝機能が上がるにつれて心臓防御反応は強くなり、動体視力が低下し続けることになる。

家に帰ってから治療法について考えたが、治療自体はうまく行っていて何の問題もないという結論にしかならなかった。動体視力が低下しても、肝機能は肉を食べて上げるしかない。もう一つできることは、詰碁で連続正解数を増やして脳の機能を上げることだ。幸いにもオリジナルの漢方薬で三里が緩み、脳の脾虚もオリジナルの漢方薬で緩むようになったので、詰碁のミスは極端に少なくなった。以前と違って130問連続正解しても問題が起きないので、連続正解数を150問にすると心臓がわずかに緩むようになった。

このとき、なぜ梅澤さんがサーティースで優勝できなかった理由が分かった。心臓の能力の限界が肥田式の限界になるのだ。翌日、丸善のお店にお礼に伺ったとき、心臓の能力の限界が肥田式の限界になることと、どうすれば心臓の機能を上げることができるか教えた。梅澤さんは、僕とは違って心経が骨のように固くなっているわけではない。肝機能を上げれば心臓の機能は上がるはずだ。

梅澤さんが『僕はもうだめかもしれない』というので、フォスファチジルセリンと卵で小脳の機能を上げる方法を教えたことがあった。『僕はもうだめかもしれない』というのは、梅澤さんが育て上げた精鋭の動体視力が高いために、試合に負けるようになってしまったということだったのだ。丸善クラブのトップの梅澤さんより強い人は、丸善クラブに入っては来ない。育て上げた精鋭も、梅澤さんより強くなれば、他のクラブに行ってしまうかも知れない。そこに梅澤さんの苦悩があったようだ。この『ハンバーグを毎日3カ月食べれば、昨日来ていた人達は問題にならなくなります』と言うと、梅澤さんはうれしそうに『冷凍ものなんですね』と言った。

2022/6/27